はてな
・薬剤師の就職先、沢山あって迷う。
・自分がどんな職種に向いているのか解らない。
このような疑問についてお答えします。
「Pharmacist Income」のユウです。現在、地方の薬局チェーンで管理薬剤師兼新人教育担当兼学生実習担当をしています。
前は人事も担当していて、今は部下に任せていますが、その視点から薬剤師の就職先についてお話します。
ちなみに、この記事は、薬学生の薬局実習の最後にいつもお話させて頂いている内容になります。少しでも参考になれば幸いです。
この記事では、以下の事が解ります。
ポイント
・主な薬剤師の就職先の種類
・ それぞれの就職先についての解説
・薬剤師一年目にお勧めの就職先
・ 薬学生、経験の浅い薬剤師が就職先を選ぶコツ
ちなみに、私の場合、
メモ
大手の薬局&ドラッグストアチェーン(4年)
↓
個人の漢方薬局(4年半)
↓
中堅の地方調剤薬局チェーン(現職)
という感じで就職&転職を経験しています。
各職種にも知り合いが居り、今の薬局と前の薬局で人事担当もしていましたので、それぞれの立場・目線から就職&転職についてお話できるかと思います。
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主な薬剤師の就職先は?
主な薬剤師の就職先は非常に多岐に渡ります。
その中で、主なものを挙げますと、
病院、調剤薬局、ドラッグストア、漢方薬局、製薬企業(MR、研究者)、大学職員(研究者)、派遣薬剤師、公務員、医薬品卸、治験コーディネーター
になります。
挙げてみますと、思った以上に薬剤師の活躍できる場が多い事が解ると思います。
ですので、大学に在学中の時は「病院か薬局か。」で迷う方が多いのですが、現実はもっと広い視点で就職先を選ぶべきです。
それでは、各職種についてご紹介して行きます。
病院という就職先・転職先は?
薬学生さんにとっては、一番気になる就職先ではないでしょうか。
公立、私立色々と病院がありますが、今まで習った知識を生かそうと思うと、どうしても就職先の候補には入ってきます。
さて、この病院という就職先ですが、実際の所どうなのでしょうか。
私は、実は病院には就職したことがありません(学生実習はしています)。
薬局薬剤師としての立場からお話しますと、病院は注射剤や特殊な医薬品等、薬局では経験出来ない医薬品の扱いが出来ますので、勉強するには非常に良い環境と言えます。
只、自分が医療のどういう分野に興味があるかを見極め、希望の就職先を選定しないと後で辛い事になりかねません。
というのも、一般的に病院薬剤師の年収は400万付近であり、役職持ちで500万に届くかどうかという所になります。
医師と同じく6年間大学で勉強し、試験に合格したとしても給与面からは恵まれているとは言い難いのが現状です。
病院薬剤師から薬局薬剤師へ転職する、という話もよく聞きますが、理由としては、やはり給与面の問題から、という場合が多いです。
ですので、病院に就職する場合は、その辺りをどう考えるか、というのが重要になってきます。
給料よりやりがい、専門を極める、というのであればそれも良し、病院でも給与の良い所を探すのも良いですし、期限を切って転職するのもいいと思います。
例えば2年なら2年と期限を切って総合病院に就職し、手に職をつけるつもりで働くという選択肢は有りです(給与面は二の次で、期限が来たら転職)。
調剤薬局という就職先・転職先は?
次は調剤薬局です。
一概に調剤薬局と言いましても、例えば大手チェーン、中規模チェーンや地元の中小チェーン、個人薬局と、規模も考え方も全然違います。それぞれ見ていきます。
大手チェーン薬局の場合
大手チェーンの場合、大体が調剤薬局とドラッグストアの両方があり、ドラッグストア併設の薬局になっている事が多いのが特徴です。
研修システムが非常にしっかりとしており、新卒で働くというのであれば、非常にお勧め出来る就職先になります。
しかし、デメリットが無いわけではありません。
例えば、仕事の方式が確立されてしまっていますので、自己裁量が狭く、息苦しく感じる事もあります。
お金を追うように、一か月の売り上げ目標も課せられる事も多いです。また、薬剤師以外の業務にも借り出されたりする事があります。
実際に聞いたのは「着物を着て新春初売りセールのレジをした。」、「医薬品じゃなくて化粧品を売っている」等です。
これらは、一概にデメリットとは言えませんが、薬剤師の仕事かというとちょっと違うのではないでしょうか。
他にも、勤務地が自分の希望とはそぐわなかったりする場合も発生します(地域、仕事内容が希望に合わない等)。
総合的に考えますと、幅広くきちんとした知識を学べるという面がありますので、新人や経験の浅い薬剤師が勉強目的で就職するには非常に良いのではないでしょうか。
中規模チェーンや地域の中小チェーン薬局の場合
中小のチェーンの場合です。
先にデメリットをお話しますと、大手チェーンに比べると、研修がしっかりしていなかったり、組織の命令系統があやふやになっていたりする事が結構あります。
また、店舗差が非常に大きく、調剤の流れもそれぞれの店舗でバラバラだったりする事が多いです。
ですが、自分自身で常に勉強して自己改善が出来るのならば、出世するスピードも速いです。
自分の提案が大手チェーンに比べて通り易かったり、やる気を見せれば重要ポストに抜擢されたりする確率も高いです。実際、そのような目的で転職されて来る方も見えます。
大手チェーンに比べて、個人の裁量範囲が大きい傾向にあります(その分責任も大きい)。
また、中小の薬局・ドラッグストアチェーンの場合は、人材難である場合が多いので、薬剤師の給料は一般的に高めです。
この辺りも、中小チェーンに就職するメリットではないでしょうか。
ドラッグストアという就職先・転職先は?
ドラッグストアの場合は、前の見出しの「調剤薬局」の部分と被る所がありますが、業務内容がかなり違いますので、分けてご紹介します。
昔は、中小企業のドラッグストアも多くあったのですが、合併や統合を繰り返して、今は殆ど大手チェーン企業の傘下にあるドラッグストアになっています。
ドラッグストアでの仕事内容は、医薬品の販売だけしていれば良いという事はありません。
重い商品を持ったり、オムツやトイレットペーパー、ティッシュペーパーの補充や雑貨の発注、売り上げの管理、レジ等、体力仕事や薬学とは全然関係ない仕事も多くこなす必要があります。
これらの部分の考え方次第ですが、このような業務が苦にならないようなら、楽しい職場になります。
この「楽しい職場になる」というのは、「医薬品の販売を自分の責任の下で行える」というのがその理由です。
医師の処方箋がなくても医薬品をお客様に渡せるというのは、非常に自由で魅力的な仕事です。
しかし、登録販売者の資格が出来てからは、ドラッグストアでの薬剤師のメリットは「要指導医薬品、第一類医薬品を販売できるかどうか」の差しかなくなっていますので、ドラッグストア一本で生きていくというのは最近では難しくなっているのが現状です。
また、この事に関連して一つ言えるのは、「OTCと調剤両方出来て一人前」という事です。
ドラッグストアだけの経験だと医療用医薬品が解らない、調剤だけですとOTCが解らない。どちらか一方だけでも片手落ちになります。
出来れば、両方経験があった上でドラッグストアを選ぶ、という選択が良いのではないでしょうか(結局、薬剤師は調剤からは離れ過ぎない方が良い、とも言えます)。
登録販売者資格との差も、実はこの部分で生きてきます。
漢方薬局という就職先・転職先は?
就職や転職に関してどうのなのか、結論から言いますと「よく吟味しましょう。」となります。これについて、どういう事なのかを順番にご説明します。
薬剤師としての基盤が先
これはリスクヘッジになりますが、漢方をする前に、まず薬剤師としての基礎力を付けておいた方が良いです。
漢方だけやっていても意味がないというのが理由です。
西洋医学の考え方、実際の臨床で使われる薬についての知識、患者さんの対応。どれをとっても、身になるもの、後になって役に立つものばかりです。
ですので、まずは、調剤薬局か病院薬剤師でみっちりと調剤(とOTC)を学んでからでも遅くないです。
私の知り合いですが、3年間、忙しい薬局で西洋医学を学び、次に漢方薬局で3年間、その後独立して漢方薬局を含むチェーン会社を運営している先生も見えます。
そういう道もありますので、ご紹介しました。
漢方薬局への転職
調剤か相談薬局か
まずは調剤か漢方相談薬局かという所です。
前者は普通の調剤薬局と同じ様に、医師の処方箋に基づいて調剤して漢方薬をお渡しして服薬指導を行う薬局で、後者は自分の薬局で薬局製剤を作り、相談して販売する薬局です。
前者は比較的数はありますが、後者は本当に数が少なく、本当に運が良くないと出会えないレベルです(経営基盤がぜい弱かつ、漢方相談は専門知識がかなり要る為、薬剤師を中々雇えない)。
漢方の流派
呼ばれる中国の金・元時代の漢方処方に基づいた流派と、古方と呼ばれる傷寒論、金匱要略を中心とした流派、また、最近では中医学と言い、中国で現代まで行われている漢方医学に基づくものの3種類があります。
漢方処方を構成する生薬の種類は、中医学>後世方>古方の順番で多くなりますので、もし薬局見学に行かれるのであれば、出される処方を実際に見せて貰うと良いでしょう。
また、中医学は処方量も多くなる傾向にありますので、場合によっては非常にキツイ、重労働に値する調剤を行わないといけなくなる場合があります。
体力がある場合は良いのですが、病気がちだったり体力に自信がなかったら、中医学は避けておいた方が良いでしょう。
まずは漢方の勉強が大事
「類は友を呼ぶ」という言葉があります。漢方薬局への就職を考えられている場合は、まずは漢方を勉強する事をお薦めします。
そうしないと、処方の良し悪し等が解らず、結果として転職失敗という事にも成り兼ねません。
ですので、自分が良いと思う漢方処方の使い方に近い漢方薬局が現れるまでは、地道に勉強していく事をお勧めします。
ある程度勉強が出来たなら、「駄目で元々」という気持ちで転職活動をしてみるのも良いと思います。
製薬企業(MR、研究者)という就職先・転職先は?
製薬企業の場合はどうでしょうか。MR(医薬情報担当者)と研究者で分けてご説明します。
MRの場合
やはり、給料が高いのはMRで、年収1000万円超も狙える、薬剤師としては一番高収入と言える職業です。
MRは、医師・薬剤師に対する医薬品の情報提供が主な業務ですが、やはり製薬企業としては、自社の医薬品を使って頂く事が一番優先されますので、医薬品のセールスが業務、と言っても良いでしょう。
仕事内容は、医薬品の情報提供をはじめとした病院や薬局への挨拶回り、医師薬剤師へのプレゼンテーション、学会等での企業ブースの運営等、非常に多岐に渡ります。
営業職では一番キツイと呼ばれていますが、頭を下げる事が苦にならない、人懐こくて体力のある方にはお勧めの職種となります。
MRで働いた後は、調剤薬局のオーナーとしての道もあり、事実、MR出身のオーナー様は非常に多い印象です。
デメリットとしては、調剤業務、OTC販売業務に着けない事、勤務地を中々選べない事等があります。
ちなみに、会社には内緒で薬局でアルバイトするという方も中にはお見えです。また、営業先の医師や薬剤師と仲良くなり、結婚される方も見えます。
研究者の場合
研究者は、昔は修士課程修了でも企業の研究者として就職出来たようですが、今は基本的には博士号が無いと無理という印象です。
また、企業研究者の場合、母体が企業である為、目標が設定され、基本的には企業に利益になる研究をする事になります。
しかし、学会発表等も行う為、大学の教授助教授等の先生にも面識が出来、場合によっては大学の助教授職、教授職として転職する場合もあります。
ですので、製薬企業の研究者を目指す場合は、まずは大学の研究室に在籍し、博士号取得を目指す事になります。
デメリットとしては、MRと同じ様に勤務地が限られるという所でしょうか。私の友人にも企業研究者が居ますが、田舎で社宅住まいという状況で頑張っています。
大学職員(研究者)という就職先・転職先は?
私の大学の同輩や後輩にも居ますが、必ずしも母校という訳ではなく、他大学に行くケースもあります。
この場合は修士から就職可能ですが、教授になるにはどうしても博士号が要ります。
大学の研究者のメリットは、好きな研究が出来る、長期休暇が取りやすい、認定薬剤師のシールがすぐに溜まる(学会によく出席する為)という感じです。
デメリットとしては、給料が教授になるまでは安い、勤務地が限られる、婚期が遅くなる、学生に対する講義がある(教えるのが好きならメリットに変わります)という事です。
また、期限を区切っての仮採用等もあり、論文を何本出したか、等のノルマが発生する事もあります。
派遣薬剤師という就職先・転職先は?
派遣薬剤師は、派遣会社に登録して、期間を切って働く方法です。
主に薬剤師不足の薬局で需要があります。経験の浅い薬剤師や、新卒ではお勧めしません。
しっかりと基礎が出来ているなら、選択肢に入ります。自分の時間を持ちたい、色んな所で働きたい方にはお勧めです。
また、給与が高いのがポイントになります。年収700万超えも場合によってはあるようです。フリーランスに向いた働き方と言えます。
公務員という就職先・転職先は?
公務員は、月給は最初低いのですが、ボーナスや生涯年収が高い傾向にあります。
公立病院で調剤に従事する他、保健所等で薬事行政に関わったり、環境調査等を行う場合もあります。最も安定した職種だと言えます。
しかし、デメリットが無い訳ではなく、副業が基本的に禁止となります。
投資等は出来ますので、資産を増やそうと思った場合はそのような方法を取る事になります。また、薬局や病院の監査、取り締まり業務等もあります。
医薬品卸の管理薬剤師という就職先・転職先は?
医薬品の卸販売にも管理薬剤師が必要となりますので、そのような就職先を選ぶ方も見えます。
医薬品の管理、DI(医薬品情報)業務の他に、MS(医薬品卸の営業担当者)への教育、その他取引先(製薬会社、薬局、病院等)等への連絡調整業務等多岐に渡りますので、非常に膨大な知識が必要とされる職種です。
収入は、薬局の薬剤師と同じ位でしょうか。
治験コーディネーターという就職先・転職先は?
医薬品開発に関わる仕事として治験コーディネーター(以下CRC)という職種があります。
薬剤師の他に、看護師、臨床検査技師、栄養士の方も、CRCとして働けます。
基本的な業務内容としては、治験に参加される方の選定、治験の説明、治験の決まりを守らせる、という3つがあります。
人への説明や管理が発生しますので、コミュニケーションスキルがかなり求められる職種と言えます。また、調剤には関わらなくなりますので、調剤の技術は衰えます。
薬学生、経験の浅い薬剤師が就職先を選ぶコツ
様々な職種の解説をしてきましたが、ここまで就職先が多いと本当に迷います。この見出しでは、薬学生や経験の浅い薬剤師の先生を対象として、就職先を選ぶコツをお話します。
①:自分の興味のある就職先を書き出してみる
まずは、色々な制約や条件を抜きにして、自分自身が興味を持っている職種を書き出します。
実際に紙に書いてみるというのはとても大事で、可視化する事で色々な問題点や情報があぶり出されてきます。まずは、自分の希望をはっきりさせましょう。
②:①で書き出した職種について、収入や将来のキャリアを比べてみる
「いきなり収入?!」と吃驚されるかもしれませんが、非常に重要です。
就職や転職に失敗する方は、この部分を考えずに自分自身の興味だけで選んでいる傾向にあります。
人生の大イベントである結婚、出産、育児、子供の就学&進学、マイホーム購入等、お金がかかる事は山の様にありますので、この辺りはしっかりと考えましょう。
③具体的な就職先や転職先を選び、キャリアプランを決める
最後は、具体的な就職先や転職先を絞って選び、キャリアプランを考えていきます。
一人で考えて決めても良いのですが、それだとどうしても無理なプランになったり、条件が厳しすぎたりしてしまう事が多くなります。
この段階でお勧めなのは、人材紹介会社を利用するという手です。
人材紹介会社は、薬剤師の転職情報に関して沢山の情報を持っていますので、担当者の方と相談しながらキャリアプランを決めて行けば、すんなりと就職・転職が出来ます。
私も2回目の転職の際は人材紹介会社に登録し、相談しながら今の薬局に就職しています。
お勧めの人材紹介会社は、全国区で薬キャリ 、株式会社AXIS 、関西圏で、メディカルプラン、になります。
一度、登録してお話されると良いですよ。
薬剤師一年目にお勧めの就職先
私が、いつも薬局に見える実習生の方にお話している事があります。それは、「まずは薬剤師として基礎を固めましょう。」という事です。
色々とここまで職種を挙げてきましたが、薬剤師として働くのでしたら、まずは「調剤」をしっかりと身につける事が大事です。
少し給与が安くても、忙しい所で調剤技術を学んだ方が良いとお話しています。
期限を3年位に切って、例えば総合病院の薬剤部やその門前の薬局に就職して、技術を磨く事をお勧めしています。
お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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