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処方箋に最近、検査値が載って来るけど、どうやって取り扱えばいいんだろう。副作用とかチェックしたいし、基本を知りたいです。
このような疑問をスッキリ解決します。
「Pharmacist Income」のユウです。薬剤師として薬業界に入って、調剤をメインに十数年仕事をしてきました。
今日は、新人の薬剤師の方や薬学生の方向けに、調剤時に検査値を使って副作用をチェックする方法をお話します。
基本的な所ですが、本当に大切な所ですので、この記事でポイントを押さえて頂ければと思います。
この記事では、以下の事が解ります。
ポイント
副作用チェックに使うのは腎機能&肝機能の検査値
腎機能に関連する検査値で行う副作用チェック
肝機能に関連する検査値で行う副作用チェック
まとめ(より安全な医療へ向けてスキルアップしよう!)
薬局&病院問わず、調剤は時間勝負の面がとても大きいです。
しかし、その時間のない中で副作用をチェックして、より安全な医療を提供出来ると凄く良いですよね。
簡単に使えるようにまとめましたので、気軽に読み進めて頂ければ幸いです。
それでは、宜しくお願いしますm(_ _)m
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副作用チェックに使うのは腎機能&肝機能の検査値
一昔前は信じられない事ですが、主に大病院の処方箋に検査値が載るようになりました。
今までは患者さんに検査データを教えて貰ったり、お薬手帳に貼られているものを許可を貰って見せてもらうだけだったので、より安全な医療に配慮された方式になってきたと言えます。
検査値を見る上で、重要な項目は疾患別に色々ありますが、共通して見るべきものは腎機能と肝機能の検査値です。
この項目を見ているだけで、患者さんに副作用が発現しているかどうかを推定する事が出来ますので、診療科に関わらず押さえておくべき必須な項目と言えます。
次の見出しから、順に腎機能と肝機能の検査値とそれらと薬の取り扱いについて簡単に解説していきます。
腎機能に関連する検査値で行う副作用チェック
上記4種類の検査値を見ながら、腎機能を評価して処方薬の副作用をチェックします。各検査値の詳細と、チェックの方法について順にご紹介します。
腎機能に関連する検査値
副作用チェックに必要な腎機能を表す検査値は4種あります。
それぞれ、本来、腎により排泄されていた場合には血中濃度が上がらない血清クレアチニン(sCr)と尿素窒素(BUN)の2種と、sCrから導かれる腎機能を表す推算糸球体濾過量(eGFR)、クレアチニンクリアランス(Ccr)の2種となります。
尚、eGFRとCcrの二つは簡易的に用いられる推算式より算出されますので、実際に用いられる場合は欠点を把握して注意しながら用います。それでは、順に見てきます。
血清クレアチニン(sCr)
まず最初は血清クレアチニン(sCr:Serum Creatinine)です。特徴は、以下のようになります。
クレアチニン:筋肉に含まれているタンパク質の老廃物で、腎臓の糸球体で濾過されて尿に排泄されます。腎機能が悪化すると、血清中のクレアチニンが排出されにくくなり、濃度が上がります。
基準値:男性1.2mg/dL以下、女性1.0mg/dL以下(腎機能悪化で数値上昇)
特徴:筋肉量の多い人は高めに、少ない人は少な目になる傾向があります。
尿素窒素(BUN)
次に尿素窒素(BUN:Blood Urea Nitrogen)です。特徴は、以下のようになります。
尿素窒素:タンパク質が利用された後に出来る老廃物で、腎臓の糸球体で濾過されて尿に排泄されます。腎機能が悪化すると、血液中の尿素窒素が排出されにくくなり、濃度が上がります。
基準値:8~20mg/dL(腎機能悪化で数値上昇)
特徴:タンパク質の取りすぎ、消化管からの出血、脱水、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍等でも上昇します。
推算糸球体濾過量(eGFR)
次に推算糸球体濾過量(eGFR:estimated Glomerular Filtration Rate)です。特徴は、以下のようになります。
推算糸球体濾過量:本来なら糸球体濾過量(GFR)を測定すべき所ですが、色々と煩雑な検査を行う必要がある為、簡易的な評価法として使われています。
推算糸球体濾過量の算出方法:
eGFR(男)=194×Scr-1.094×age-0.287, eGFR(女)=eGFR(男) ×0.739
基準値:
正常または高値(GFR≧90)
正常または軽度低下(90>GFR≧60)
軽度~中等度低下(60>GFR≧45)
中等度~高度低下(45>GFR≧30)
高度低下(30>GFR≧15)
末期腎不全(15>GFR)
特徴:筋肉量が低下している状態や栄養状態が悪い場合、血清クレアチニンが低値となり、腎機能が過大評価されてしまう可能性があります。
クレアチニンクリアランス(Ccr)
最後はクレアチニンクリアランス(Ccr:Creatinine Clearance)です。特徴は、以下のようになります。
クレアチニンクリアランス(Ccr):クレアチニンを排出する腎機能の検査値。本来なら入院して測定すべき所ですが、通院治療でも使用できる簡易的な計算式から推算される値が主に用いられています。
クレアチニンクリアランス推算式(Cockcroft-Gaultの式):
男性Ccr=(140-年齢)×体重/(72×血清クレアチニン値)
女性Ccr=0.85×男性Ccr
特徴: 肥満患者の場合、腎機能を過大評価してしまう可能性があります。
腎機能に関連した副作用チェックの方法
基本的には、eGFRとCcrの低下を見ながら、sCrとBUNを補助に使う感じで行います。
腎排泄がメインの薬物(例えばバラシクロビルでは約85%が腎排泄)等には、投与量制限のあるものもあります。
ですので、その様な特殊な薬剤を押さえておいて、腎機能の検査値を見ながら処方量が妥当かどうか、また、副作用等が出ていないかをチェックしています。
薬剤性腎障害を起こすものは非常に多くの薬剤があり、昨今は投与医薬品数も多い為、腎機能を調剤時毎に必ずチェックしましょう。
また、糖尿病患者さんは糖尿病性腎症が懸念されますので、こちらも絶えず腎機能をチェックしておくと安心です。
若い方ですと、まだまだeGFRが下がってきていない方が殆どですが、今のままだと腎機能が下がって来るという事は、折を見て繰り返しお話した方が良いでしょう。
肝機能に関連する検査値で行う副作用チェック
上記5種類の検査値を見ながら、肝機能を評価して処方薬の副作用をチェックします。
しかし、これら5種のうちγ-GTP、ALP、LD(LDH)は、肝臓以外にも心臓、腎臓、筋肉、骨等にも多く存在しますので、これらが高くなったからと言ってすぐに肝障害が起こっているとの判断は出来ません。ですので、複数の検査値を見て肝障害の目星をつけていきます。各検査値の詳細と、チェックの方法について順にご紹介します。
肝機能に関連する検査値
副作用チェックに必要な肝機能を表す検査値の5種について、それぞれ順に解説していきます。
AST(GOT)
最初はAST(GOT)です。特徴は、以下のようになります。
AST(GOT):Aspartate transaminaseの略で、アスパラギン酸の代謝酵素(アミノ基転移酵素)になります。
基準値:13~30 IU/l(肝機能悪化で数値上昇)
特徴:肝細胞が壊れると逸脱して数値が上がります。赤血球、心筋にも含まれるので、溶血性貧血や心筋梗塞等でも上がります。肝障害で基本的に数値が上がりますが、肝細胞が破壊されつくされますと低下します。
ALT(GPT)
次にALT(GPT)です。特徴は、以下のようになります。
ALT(GPT):Alanine transaminaseの略で、アラニンの代謝酵素(アミノ基転移酵素)になります。
基準値:男性10~42 IU/L、女性7~23IU/L(肝機能悪化で数値上昇)
特徴:肝細胞が壊れると逸脱して数値が上がります。肝障害で特異的に数値が上がりますが、肝細胞が破壊されつくされますと低下します。
γ-GTP
次にγ-GTPです。特徴は、以下のようになります。
γ-GTP:γ-Glutamyl transpeptidaseの略で、γ-グルタミルペプチド(グルタチオン等)を加水分解して、他のペプチドやアミノ酸にγ-グルタミル基を転移させる酵素になります。
基準値:男性13~64 IU/L、女性9~32 IU/L(胆道疾患や肝障害で数値上昇)
特徴:肝障害の他、胆汁うっ滞、胆石、胆道閉塞等の胆道疾患でも数値が上昇します。また、肝臓以外にも心臓、腎臓、筋肉、骨等にも多く存在しています。また、アルコール摂取で上がるので、飲酒について聞くことが重要です。
ALP
次にALPです。特徴は以下のようになります。
ALP:Alkaline Phosphataseの略で、塩基性下でリン酸エステル化合物を加水分解する酵素で、肝臓、腎臓、小腸などに広く分布しています。肝障害を始めとする臓器の損傷や秋修復が行われると、値が上がります。
基準値:106~322IU/L
特徴:骨疾患や妊娠時に増加。一歳から青春期前期までは成人のおよそ3~4倍になります。ですので、肝障害の目安には補助的に用います。
LD(LDH)
最後はLD(LDH)です。特徴は以下の様になります。
LD(LDH):Lactate Dehydrogenaseの略で、乳酸脱水素酵素です。肝細胞が破壊されると、血中に出てきますので、肝機能に関する検査値になります。しかし、心筋梗塞、溶血性貧血、悪性腫瘍、感染症、骨格筋の病、腎炎等でも上昇しますので、ALP同様に補助的に用いる検査値となります。
基準値:240~490 IU/L
特徴:肝障害で血中濃度が上がりますが、他の身体の異常でも上がりますので、この検査値のみで肝障害とは言えません。
肝機能に関連した副作用チェックの方法
肝障害の定義は、ALTが正常上限の2倍、ALPが正常上限を超えたものになります。
肝障害の種類は、肝細胞障害型と胆汁うっ滞型、混合型の3種類がありますが、調剤レベルでは肝障害の有無だけのチェックでも大部分がカバー出来ます。
肝障害を起こす薬剤は非常に多くありますので、肝機能に関する検査値は調剤毎に確認したい所です。
肝障害を起こしやすい薬剤としては、以下の様なものが有りますので、これらが出ていたら特に注意が必要です。
テルビナフィン、クロピドグレル、カルバマゼピン、チクロピジン、ゲフィチニブ、ロキソプロフェン、テガフール・ウラシル配合剤、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン
注意すべき薬剤は、グループ分けしますと水虫の内服、血栓抑制、抗悪性腫瘍剤、高脂血症治療薬になります。
ですので、この辺りが出ている患者さんの肝機能は特に注意してみておきましょう。
また、漢方薬やサプリメント等でも肝障害を起こすものがありますので、OTCや健康食品の摂取を確認しておいた方が良いです。
まとめ(より安全な医療へ向けてスキルアップしよう!)
腎機能、肝機能の数値を見て、処方薬が妥当かどうかチェックする事で、起こり得る有害事象を事前に止める事が可能となります。
薬剤師は薬のプロフェッショナルですので、より安全な医療に向けて、これらの検査値をチェックして、患者さんの健康に貢献しましょう。
本記事は、本当に基本中の基本となりますので、「もっと勉強したい!」と考えていらっしゃる方はこちらの本をご参考下さい。
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