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漢方の監査や服薬指導は難しい?良い方法をご紹介します!

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漢方の監査・服薬指導

漢方の監査・服薬指導

はてな

漢方の監査や服薬指導が苦手です。良い方法無いかあ?

このような疑問をスッキリ!解決します。

「Pharmacist Income」のユウです。薬剤師として長年働いていますが、漢方処方が多い調剤薬局も経験しています。

本来なら漢方理論を元に監査&服薬指導すべきですが、流派によっても色々と考えが違い、中々難しいものがあります。

今回は、漢方薬の特性を押さえて、簡単かつ質の高い調剤業務を行う方法をご紹介します。

この記事では、以下の事が解ります。

ポイント

漢方の監査&服薬指導のポイントは2つ(効果、副作用)

漢方の各副作用について

漢方の効果判定は3種類(EBM、漢方理論、残薬確認)

本格的に漢方を勉強するにはどうすれば良いか?

医学体系が西洋医学と違いますので、どう処方を監査し、服薬指導すれば良いか迷われる先生は多いです。

ですが、コツを掴んでしまえば自信を持って患者さんに説明出来る分野でもあります。本記事で説明させて頂く方法を使って頂き、漢方に対して自信を持って頂けたら幸いです。

タクミ
それではよろしくお願いいたします。

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漢方の監査&服薬指導のポイントは2つ(効果、副作用)

タクミ
漢方は、身体に合えば「効果」が出て、合わなければ「副作用(誤治)」と考えます。

漢方に特徴的な考え方に証があります。

この証は「葛根湯証は葛根湯。」「十全大補湯証は十全大補湯。」という風に、「体質や病気に合うor合わない。」と考えます。

英語なら、Be動詞の様なものです。逆に、西洋医学は「フロセミドは尿を出す。」の様に、普通の動詞の様なもの、と考えます。

そうしますと、両者の違いが解るのではないでしょうか。下の表にまとめましたので、ご参照下さい。

<漢方>

Be動詞:葛根湯証は葛根湯。

特徴:証と薬はイコールで、合うか合わないか。その証(状態)にしか効かない。別の証に使った場合は効かず、場合によっては副作用が出る。

<西洋医学>

通常の動詞:フロセミドは尿を出す。

特徴:どんな人に使っても、基本的には同じ効果が出る。

漢方の特徴について、簡単ですがご理解頂けたと思います。この特徴を利用して、監査や服薬指導をすると、意外と簡単にこなす事が出来ます。

我々薬剤師は、医師とは見方が逆で、「安全に薬を使うか。」という主眼で処方を把握します。

漢方の場合もそれと同じで、「副作用が出ていないか?」という視点で見る事で、逆により良い薬物治療を行う事が出来ます。

また、漢方の効果判定や使い方については医師それぞれで見方が違います。ですので、効果説明に関してはどうしても曖昧な部分が出てきてしまいます。

この辺りの精度を高めるには漢方理論を勉強して頂く必要がありますが、それは安全に漢方が使えてこそです。

副作用は誰が見ても副作用ですし、まずは、その有無をチェックする方が優先されるべきです。第一に安全ですので、その順番は逆には出来ません。

本記事では、最初に漢方の副作用についてご紹介し、その後で効果説明についてご紹介します。

また、漢方の勉強の仕方については本記事の最後でご紹介しますので、宜しければご参照下さい。

漢方の各副作用について

漢方の副作用チェックがポイント

漢方の副作用チェックがポイント

タクミ
漢方で起きる可能性のある副作用をご紹介します。

本来、漢方の用語には副作用という言葉はありません。その代わり、誤治と呼ばれる、誤った治療という意味の言葉があります。

つまり、有害な副作用が起きたという事は、誤った治療をした治療者の責任になります。

実際の臨床現場では、検査値や患者さんの様子から副作用のチェックをして、その視点から患者さんに薬の説明をします。

以下より、漢方で起こり得る副作用(誤治)についてご紹介します。

偽アルドステロン症

漢方処方によく用いられている甘草の副作用として知られています。

ご存じの通り、アルドステロンという鉱質コルチコイドによく似た作用を甘草の成分であるグリチルリチンが持つ為、起こります。

検査値として特徴なのは血清カリウム濃度が低くなり、逆にナトリウム濃度が上がってきます。

それに伴い、高血圧や浮腫をはじめとする様々な症状が現れてきます。

ですので、漢方を飲んでいる場合、臨床検査値でカリウム濃度を投薬時にチェックする事で、偽アルドステロン症が起こっていないかが解ります(血清カリウム基準値:3.6~5.0mEq/L)。

また、併用薬でサイアザイド系、ループ系の利尿薬を飲んでいないかもチェックしましょう(漢方処方の併用が無いのも当然チェックします)。

ミオパチー

上の見出しの偽アルドステロン症により、低カリウム血症が起こった結果、ミオパチーを起こす事があります。

脱力感、四肢の痙攣、麻痺等の筋肉の異常がある場合、すぐに血清カリウム濃度をチェックしましょう。

間質性肺炎

肺の間質という組織に炎症が起こり、次第に繊維化していく病気です。漢方処方に使われている黄芩という生薬が原因と考えられています。

日本では、小柴胡湯とインターフェロンの同時使用で爆発的に起こり、大問題となりました。

痰を伴わない空咳が症状になりますので、そのような症状が出ている場合、一度、間質性肺炎を疑って受診して頂くようにお勧めします。

過敏症

漢方処方は、複数の生薬を組み合わせて構成されており、それらに対する過敏症を起こす事もあります。

構成生薬中に含まれている成分は、西洋医学的に未解明なものも存在します。

また、生薬に含まれる成分に対して過敏症を起こすかどうかは、実際に飲んでみないと解らない事が大半です。

出てくる可能性のある症状は、呼吸困難、血圧低下、意識低下、痒み、発疹等があります。

飲んで比較的短時間で出て、その症状が劇的なものが多い為、その様な症状があればすぐに病院受診を促す必要があります。場合によっては救急車も検討します。

腸間膜静脈硬化症

漢方処方によく使われる山梔子(さんしし:クチナシの実)が原因で起こると考えられています。

この生薬が含まれる漢方処方を長期間服用(年単位)した時、大腸の色調異常、浮腫、びらん、潰瘍、狭窄等が起こる事があります。

山梔子配合の処方が長期間出ている様なら、一度医師に確認した方が良いでしょう。

腎障害・肝障害

意外と多いのが、腎障害や肝障害です。

腎障害はsCrやeGFR、BUN等を中心にチェックし、肝障害の場合はAST、ALT、γ-GTP等を中心に検査値異常をチェックしていきます。

腎障害、肝障害の検査値を薬局でチェックする方法は、下記の記事にてご紹介していますので、併せてご参照頂ければ幸いです。

高血圧

上の見出しの偽アルドステロン症でも高血圧症状が出ますが、それ以外にも麻黄含有処方にて高血圧が引き起こされる事があります。

血圧降下剤を飲んでいる方、心臓疾患を持たれている方、脳血管障害等をお持ちの患者様に処方されている場合は注意が必要となります。

排尿障害

麻黄含有製処方等で排尿障害が引き起こされる危険があります。意外と見落としがちな所ですが、患者さんの体調をチェックしておくと安心です。

血圧低下

上の見出しで高血圧の副作用をご紹介しましたが、逆に血圧低下を起こす事もあります。

気力体力が衰えている時に、防風通聖散の様な毒取り処方を飲むと、血圧低下を起こす場合があります。

添付文書には書いてない副作用ですが、臨床上重要ですので押さえておいて損はありません。

胃腸障害(胃痛、胃もたれ、消化不良、下痢等)

漢方処方は胃にやさしいイメージがありますが、中には胃に負担をかける処方があります。

典型的なものは地黄や当帰の含まれる処方です。

地黄は油分を多く含みますので、消化不良や下痢になりがちですし、当帰は消化管に水を呼びますので、同じく下痢を起こす事があります。

その他にも、芍薬の含まれる処方の場合は胃痛を起こす事がありますし、麻黄が含まれる処方は胃腸の動き全体を止めてしまいます。

これらの生薬を覚えておいて、胃腸障害が出ていないかをチェックしましょう。

便秘(痔)

添付文書には載っていませんが、使い続けると便秘を引き起こす漢方処方があります。人参湯や四君子湯等の補気剤、四逆湯や甘草乾姜湯等の冷えの処方です。

これらは、身体の元気を補う、または身体を温める効果があります。しかし、これらを長く使うと、気が上がり過ぎて便秘になる事があります。注意しましょう。

冷え

一つ前の見出しと同じく、冷えも添付文書には載っていませんが、臨床上重要な副作用になります。

特に瀉剤と呼ばれる、毒取りや熱取りの漢方処方を使う場合、効き過ぎて身体の本来の熱も奪ってしまう場合があります。

患者さんの話や見た目から、身体がしんどくないか、顔色が悪く無いかをチェックします。

冷えに関しては、医師もかなり見逃している事が多いので、薬局側でフォローする必要があります。

副作用のまとめ

「漢方は安全」と一般では言われていますが、そんな事は全然ありません。どうしても医師の先生は効果の方に目が行きますが、私たち薬剤師は冷静に判断しましょう。

調剤時、投薬時に「副作用が出ていないか?」「安全に使用されているか?」をチェックしていく事が大切です。

むしろ、そちらの方に重きを置いた方が良い場合が多いです。

漢方の効果判定は3種類(EBM、漢方理論、残薬確認)

効果判定は結構難しいです。

効果判定は結構難しい

タクミ
漢方の効果判定方法は、大きく分けて3種類あります。

副作用の次は漢方の効果判定になります。医師によっても効果の出た出ないは差がありますが、傾向は大まかに3種類(EBM、漢方理論、残薬確認)あります。

それぞれ解説していきます。

EBM

EBMはEvidence Based Medicine の略で、日本語訳は「根拠に基づいた医療」となります。

漢方では、西洋医学的な臨床研究等で得られたデータを元にした使い方になります。これは、例えば「こむら返りには芍薬甘草湯」「認知症に抑肝散」の様なものです。

この使い方の場合は、西洋薬と変わりなく扱う事が出来ますので、監査や服薬指導は比較的楽です。

ですが、この使い方は漢方理論上の証を全く見ずに投与する方法になります。

過去、小柴胡湯での間質性肺炎等、このEBMに基づいた使い方で大きな副作用の問題が出ていますので、副作用チェックは厳しくする必要があります。

漢方理論

漢方理論に基づいた使い方も、主に漢方専門医が中心となり行われています。

証を見ながら使う伝統的な方法になりますので、患者さんは体質に合った漢方を飲むことが出来ます。

しかし、証の決定は、各漢方の流派や、医師個人個人の考えや力量によって左右される事が非常に多く、いまいち統一されていない所が問題点としてあります。

ですので、監査や服薬指導は、漢方の見方に基づいて行う場合も出てきます。

解らなければ、添付文書の効能効果や患者さんの話から推測して説明になりますが、出来れば漢方の見方も知っておきたい所です。

漢方の勉強の仕方については、後でご紹介致します。

残薬確認

意外と知られていないのですが、漢方の残薬から効果判定をする事が出来ます。

これは単純で、身体に漢方があっていない場合は、患者さんが「飲みたくない」「不味い」「忘れる」と仰います。

多少は仕方ないにしろ、大量に余って来るようでしたら、医師の先生に相談されるように促すか、残薬調整の依頼をかけます。

また、このまま続けると副作用などが出る場合、併用薬で問題がある場合は疑義照会またはトレーシングペーパーで対処します。

本格的に漢方を勉強するにはどうすれば良いか?

タクミ
漢方の勉強方法は3種類(本、研修会、経験)あります。

漢方については、大学でもあまり教えて貰えないですし、いまいち勉強方法が解らない分野になります。

ですが、仕事では普通に漢方処方が処方箋に載ってきますので、知識は必要となります。

私の経験から、漢方の勉強方法でお勧めの3種(本、研修会、経験)をご紹介します。

一番取り組みやすい勉強方法ですが、経験が伴いませんので、机上の空論になる場合があります。とは言え、基礎知識は本での勉強が一番だと言えます。

お勧めの本は、「最新カラー図解 東洋医学 基本としくみ」「活用自在の処方解説」「生薬単」です。

それぞれ、漢方理論、医療用漢方の処方解説、生薬個々の図鑑になります。私が実際に読んで良かった本ですので、自信を持ってお勧め出来ます。

最新カラー図解 東洋医学 基本としくみ」については職場の新人薬剤師に実際にお勧めして好評でした。

また、「活用自在の処方解説」「生薬単」は業務でも使用して非常に重宝しています。

後、書籍ではありませんが、下記のブログが漢方の勉強にお勧めです。一度、訪れてみてはいかがでしょうか。

名古屋漢方 様

研修会

薬剤師会や漢方のメーカー経由で、漢方の研修会の案内が届くと思います。それらに積極的に参加されてみては如何でしょうか。

只、漢方の研修会は、他の研修会と違って研修費用がかかる事が多いです。コストパフォーマンスを考えながら参加しましょう。

無料だから悪い、有料だから役に立つという事は無く、無料でも非常に質の高い研修会もあれば、逆に有料で質の悪いものもあります。

周りの薬剤師の先生に、お勧めの研修会を教えて貰うという方法が良い手だと思います。

実地経験

漢方の勉強は、はっきり言いますと実地で経験する事が一番身に着きます。

例えば、本や研修会等では、生薬の匂い、色、形、触感等を確認できる事は殆どありません。

仕事で経験するという事は、毎日その機会が貰える事になりますので、漢方の上達が非常に早くなります。

もし、勤められている薬局で漢方を多く扱う店舗がありましたら、そちらへの転属希望を出すという手があります。

もしくは、私の様に転職してその様な薬局に就職するという手があります。

私は、ある程度、薬剤師として調剤とOTCの技量がついた時点で、専門分野を持とうと漢方を多く扱う薬局に転職した経験があります。

実際に生薬を触って、匂いを嗅いで仕事をしていましたので、今では生薬を見るだけで名前や効能、配合される漢方処方が頭に思い浮かんできます。

転職は人生の転機で中々難しいとは思いますが、宜しければ一度、薬剤師の転職サイトに登録されて相談されてみては如何でしょうか(転職サイトの利用は無料です)。

薬剤師の転職については、下記の記事にてまとめておりますのでご参照下さい。

人事を担当していた経験から、専門の薬局への転職は薬キャリ(M3キャリア)様、ファルマスタッフ様が強い印象があります。

まとめ

タクミ
「薬剤師が漢方を見る視点は副作用から。」というのがポイントです。

漢方の監査・服薬指導について、簡単かつ効果的な方法をお話させて頂きました。繰り返しになりますが、副作用の視点から処方を見る事がポイントになります。

漢方は大学でも深く勉強する事がありませんので、苦手な方が多いです。

ですが、逆に漢方が得意になると調剤業務の質が上がり、また、サプリメント等の相談も自信を持ってする事が出来ます。

お読み頂きありがとうございます。

タクミ
他の記事も宜しくお願い致します。

以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。

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