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ヒヤリハット事例を元に、薬局の業務改善をしています。何かポイントはありますか?
このような疑問をスッキリ解決します。
「Pharmacist Income」のユウです。薬剤師として薬局で働き出して、十数年が経ちました。その経験の中で、薬局でのヒヤリハットを数多く目にし、周りのスタッフと一緒に改善してきました。
本記事では、ヒヤリハットを元にして薬局の業務改善を行う上でのポイントをご紹介します。少しでもお役に立てれば幸いです。
この記事では、以下の構成となっています。
ヒヤリハットの根本にある問題を見つける
問題点を分類する
問題解決策を考える
薬局スタッフへの周知徹底
起きやすいミス&ヒヤリハット事例
まとめ
薬局でのヒヤリハットから業務改善するポイントは、他の問題解決と同じく「根本原因」を探っていく必要があります。
そして、その原因を完全に取り除くことが出来るか、又は気を付けるしか仕方ないのか、を分類して改善を繰り返すしかありません。
本記事では、業務改善の概論的な話を先にして、その後、起きやすいヒヤリハット事例をご紹介します。それでは、よろしくお願い致します。
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ヒヤリハットの根本にある問題を見つける
薬局で起こるヒヤリハットは、最終的な安全装置が働いて「危機一髪助かった。」という状態になります。
言い換えますと、ヒヤリハットが発覚するまでのチェック機能が働いてなかったという事になりますので、目に見えやすい所を改善しようとする傾向が強いと言えます。
しかし、それではまた同じミスを起こしてしまいます。何段階か改善点はあるかと思いますが、出来れば根本原因を見つけ出して改善するようにしましょう。
その方法は以下の様になります。
1、 ヒヤリハットが起こった状況を再現してみる
2、 ミスしたポイントを洗い出す
3、 ミスを分類し、グループ分けして抽象化(一般化)する
4、 抽象化した問題に対しての原因を考え、解決策を提示する
抽象化というのは、起こった問題を同じグループに分類してまとめ、それらを一つの言葉で表現します。
例えば、錠剤の規格違いや散剤の取り違えの場合は、ピッキングを行った者の「認識ミス」が共通の問題点と言えます。その「認識ミス」という問題点が「抽象化された問題」になります。
これに対して解決策を提示していきます。
この例ですと、「疲労によるもの」、「似た様なものが間違えやすい位置にあった」、「名前が似ていた」等の様に多数の原因が考えられます。その問題を検証して解決していきます。
これを行わずに問題解決しようとすると、大体「注意不足だったから。」「次は間違えない様に気をつけよう。」という精神論での対応をしがちです。
この様な間違った問題解決方法だけは避けたいものです。
問題点を分類する
ヒヤリハットの根本にある問題を見つけたら、それらを個別に解決するのではなく、同じカテゴリーに分けてからまとめて解決していきます。
前の見出しの例を使いますと、「疲労によるもの」は単独で一つ、「似た様なものが間違えやすい位置にあった」と「名前が似ていた」という「環境要因」で一つのグループが出来ます。
問題点をグループ分けする事で、多数の問題点に対して一気に解決する事が可能となります。問題点に対して一つ一つ対処していると、いくら時間があっても足りませんし、ちぐはぐな問題解決策になる事が多いです。
問題解決策を考える
カテゴリー別に分類された問題点は、基本的に同じ解決策で改善する場合が多いです。ですので、まとめて考える事が出来て効率的です。
解決策は基本的に一つという事はありません。数個の解決策をパッケージングして考えます。
上の見出しでの例で考えますと、「疲労」に対する解決策は「スタッフの就寝時間を早めるよう注意喚起」「生活改善をしてもらう」「業務の負荷を改善」「残業を少なくする」「ストレス発散」等が考えられます。
また、「環境要因」に対しては、「各医薬品の置き場所に注意書きを書く」「医薬品の位置を変更」「スタッフへの注意喚起」等があります。
これらの解決策は、実際に行動に移せるように更に具体化していくと良いでしょう。
薬局スタッフへの周知徹底
いくら良い解決策であっても、周知徹底が出来なければ机上の空論ですよね。また、スタッフに伝えている際には思いもよらない意見が出る事があります。
解決策を考えている段階では出なかった意見の事もありますので、じっくりと考えてみる事をお勧めします。
スタッフに理解してもらう事が大事ですので、間違っても自分の意見だけを押し付けるというのは避けたいものです。
起きやすいミス&ヒヤリハット事例
病院などでも同じですが、薬局での業務はかなりの部分で綱渡りになる事が多くなります。ですので、ちょっとしたミスが大事故につながる危険があります。
この見出しでは、起きやすいヒヤリハットの事例をご紹介し、注意喚起とさせて頂きます。もし同様の危険があるようでしたら、すぐに対処されることをお勧め致します。
紛らわしい薬品
有名なのは「テグレトールとテオドール」ですね。しかし、これらは名前以外にも気を付けるべき事があります。
まず、両方の医薬品の規格が100mgと200mgがあり、また、テオドールに関しては同効品にテオロングもあります。ですので、これら3つの医薬品に対して、各名前と規格について注意する必要があります。
可能なら他の薬剤師の協力を得てダブルチェックをするべきです。他にも、剤形違いでリンデロンシリーズ、モーラスシリーズ、ロキソニンシリーズ等多くありますので、注意しましょう。
併用チェック
気づきにくいのは、「クラリスロマイシンとベルソムラ」、「糖尿病患者へのクエチアピン錠」等です。また、他院で同効品を貰っている場合も発覚し辛いですので、併用チェックはしっかりとしましょう。
腎機能障害&肝機能障害
eGFRやBUN、ASTやALT等の臨床検査数値をチェックしましょう。特に、津長期療養中の糖尿病患者さんのeGFRは想像以上に下がっています。
腎機能障害で効果不良となる薬剤や禁忌の薬剤もありますので注意が必要です。腎機能障害や肝機能障害については、以下の記事で詳しく扱っていますのでご参考ください。
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アレルギー、副作用
アレルギーや副作用にも注意しましょう。
例えばアルコールに極度に弱い方等は、添加物として配合されているアルコールでも反応する場合があります。液体のうがい薬の中にはエタノールが含まれるものがありますので、それらが処方された他のものに変更しましょう。
計数ミス
計数ミスは、その場ではよくても、後で患者さんからのクレームになりかねないので注意が必要です。特に、「漢方薬の束で1つづり(3包)だけ抜く」といった行為はミスの原因になりますので、絶対にしないようにしましょう。
計量ミス
計量ミスは危険です。特に、力価で書かれている場合は計算を数度して、間違いないかを確定させてから調剤に入るのが必要です。ニュースになる事案に計量ミスはとても多いです。細心の注意を払いましょう。
充填ミス
錠剤の自動分包機への医薬品充填ミスも、起こしがちです。私の過去の経験では、カルベジロールとラベプラゾールの充填ミスがありました。
幸いすぐに気が付いて、患者さんに迷惑をかけることはありませんでしたが、黄色の錠剤で質感は同じ、刻印でしか見わけがつかないものでした。
両方のカセットが存在していた為に起こったミスでしたので、そのミスが発覚した時にカルベジロールのカセットを外しました。自動分包機への錠剤充填ミスは大事になりやすい特徴があります。
一気に作れるものは本当に危ないです。気を付けましょう。
まとめ
実は、ご紹介したヒヤリハットの解決方法は、POS(Problem Oriented System)と同じです。我々がよくなじんでいる薬歴のSOAPですね。SとOが事象の情報、Aで問題点の洗い出し、最後のPで解決策の策定と実行になります。
ヒヤリハットの改善に慣れてくると、業務だけでなく、生活環境の改善も自然と出来るようになります。是非是非、トライしてみてください。
以上、ヒヤリハットをきっかけに業務改善する方法をご紹介しました。少しでもお役に立てば幸いです。
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お読み頂きありがとうございます。
以上です。少しでも参考になれば幸いです。以下より、他の記事が検索できますので、宜しければご活用下さい。
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